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東京高等裁判所 平成6年(行ケ)244号 判決

東京都中央区日本橋茅場町2丁目6番6号

原告

田中貴金属工業株式会社

代表者代表取締役

田中清一郎

訴訟代理人弁護士

海老原元彦

竹内洋

田路至弘

訴訟代理人弁理士

山名正彦

東京都八王子市戸吹町1387番地

被告

東京コスモス電機株式会社

代表者代表取締役

吉田一郎

訴訟代理人弁護士

吉井参也

山田捷雄

訴訟代理人弁理士

草野卓

稲垣稔

主文

特許庁が、平成5年審判第10247号事件について、平成6年8月4日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  原告

主文と同旨

2  被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯等

(1)  無効審判手続の経緯等

原告は、名称を「摺動用ブラシ素材の製造方法及びその装置」とする特許第1292225号発明(以下「本件発明」という。)の特許権者である。

本件発明は、昭和52年11月28日に特許出願され(特願昭52-142439号)、昭和60年4月26日に出願公告され(特公昭60-16717号)、昭和60年11月29日に設定の登録がされたものである。

被告は、平成5年5月18日、上記特許につき、これを無効とすべき旨の審判の請求をした。

特許庁は、同請求を同年審判第10247号事件として審理したうえ、平成6年8月4日、「特許第1292225号発明の特許を無効とする。」との審決をし、その謄本は、同年10月5日、原告に送達された。

上記無効審決は、本件発明の要旨を、後記訂正審決による訂正前の特許請求の範囲第1項及び第3項記載のとおりと認定したうえ、本件発明は、米国特許第3704436号明細書に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであると判断したものである。

原告は、上記無効審決の取消を求めて、本訴を提起した。

(2)  訂正審判手続の経緯

原告は、平成6年11月1日、本件発明の特許請求の範囲の減縮を主たる目的として、明細書の訂正をすることにつき審判の請求をした。

特許庁は、同請求を同年審判第18501号事件として審理したうえ、平成7年3月23日、「特許第1292225号発明明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。」との審決をし、その謄本は、同年4月10日、原告に送達された。

2  本件発明の特許請求の範囲

(1)  上記訂正審決による訂正前の特許請求の範囲第1項及び第3項

「1 多数の極細線を移送させつつ集合した後水平に整列集束し、一方この集束した極細線に対して直角方向より台材を間欠的に送給して順次台材を移送中の集束極細線に対して一定間隔にて溶接することを特徴とする摺動用ブラシ素材の製造方法。」

「3 多数のリールより繰出される極細線を移送の途中で徐々に集合させた後その集合極細線を水平に整列集束して供給する極細線集束供給装置と、該極細線集束供給装置より供給されて一時停止した集束極細線の位置に直角方向より台材を間欠的に送給する台材送給装置と、集束極細線の位置に送給された台材を集束極細線に溶接する溶接装置とより成る摺動用ブラシ素材の製造装置。」

(2)  同訂正後のもの

「多数の極細線を移送させつつ集合した後水平に整列集束し、一方この集束した極細線に対して直角方向より一面に少なくとも1本の突条を台材の送給方向に設けた台材を間欠的に送給して順次台材を移送中の集束極細線に対して一定間隔にてプロジエクシヨン溶接することを特徴とする摺動用ブラシ素材の製造方法。」

第3  原告主張の本件無効審決の取消事由

本件発明の特許請求の範囲が、上記訂正審決の確定により、本件無効審決時のものより減縮された以上、訂正前の特許請求の範囲の記載を前提として本件発明の要旨を認定した本件無効審決には、結論に影響を及ぼす誤りがあることに帰するから、違法として取り消されなければならない。

第4  当裁判所の判断

上記当事者間に争いがない事実によれば、本件無効審決には、原告主張の違法があることに帰するから、同審決は取消しを免れない。

よって、原告の本訴請求を認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 牧野利秋 裁判官 山下和明 裁判官 芝田俊文)

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